専門家インタビュー


interview
専門家インタビュー
環境
西宮の環境への取り組みが、持続的に発展するように!
西宮市の環境問題に関わりどのような活動をされてきましたか?

市役所に入っていろいろな仕事をしていく中で、西宮の環境という冊子を初めて編集する仕事を任され環境問題と深く関わるようになりました。特に環境問題について勉強したことはありませんでしたが、大気汚染や水質汚濁、騒音防止など、全部データ計測して1冊の本にまとめると、400ページぐらいあるすごく膨大な資料集になったんです。けれど、この分厚い冊子を市民の方が見た時に、自分たちの地域の環境ってどうなっているのか、本当に理解できるんだろうかと疑問に思いました。どうすれば自分たちの暮らしと環境の問題に接点を持てるかと考えていたちょうどその頃、建設省が川に棲んでいる生き物を調査して水の汚れを調べる活動を全国で募ったんですね。我々のところにも参加依頼があり、これは面白いかもと思って参加したんです。
実際に川に入ってみると、やっぱり汚いんですよ。 当時は排水溝から生活排水がどんどん流れ出ていました。食事も和風から洋風に変わって油を使う頻度が高くなってくると、捨てられた油で汚染度はさらに上がっていくんです。生活の変化が身近な川を汚していくことを目の当たりにして、私たちは環境汚染の被害者になるだけでなく、加害者にもなると実感しました。こうした経験が、環境教育の重要性を強く感じるきっかけとなったんです。
1988年から89年にかけて小学校や中学校で水辺の自然調査、陸の自然調査を行いました。最初は、サワガニやイトミミズ、カゲロウなどの調査を、市民の方と中学校の理科部の生徒に協力してもらいながら何年か継続してやったんです。そうすると、本当に如実にいろいろなことがわかるんですよね。また、街中の生き物調査を実施した時には3000人の市民が参加して、かなり大きな事業になったんですよ。こうした活動をしながら講演会を開くなどした結果、市民の皆さんに環境について徐々に関心を持ってもらえるようになりました。山も川も海もある西宮の自然は、ものすごい大きな武器になるだろうと実感しました。
1991年頃にエネルギーとかゴミなどの問題にも目を向けた環境教育もしてほしいという意見が出たため生活とのつながりを考えるために「地球にやさしくしてますか?」という冊子を作成しました。その後、1992年に自分たちの住んでいる地域と暮らしを振り返る活動「地球ウォッチングクラブ(EWC)」をスタートし、子供たちを中心にさまざまな環境活動を年間を通して継続的に行える仕組みを作りました。これは今も続いていますが、当初は参加希望者だけで行う事業だったんです。 水辺の自然調査とかまちの中の自然調査とか、しばらく単発のイベントで行っていましたが、さまざまな反省点を踏まえた結果、年間を通じた活動へと変更しました。
次の時代の環境活動に期待すること、EWCのこれからについて教えてください。

この100年で市民がどう変わってきたか、各時代の良かったこと、悪かったことを振り返りながらそれを将来に当てはめ、学び続けていく西宮市となってもらえたらと思います。環境学習都市としてまちづくりや教育、環境への取り組みが全国のモデルの一つとして発信していけるような時代がきっと来るでしょう。100周年を機にこうしたことを目指していくことができればと思います。エコカードを活用した「地球ウォッチングクラブ」の活動の当初の趣旨を外さず、持続可能な社会システムとして定義し続けてほしいです。あとは未来への熱い想いを継続して続けてもらえたらいいかな。そのためには、マニュアル化し過ぎず、新しいアイデアを注入したりすることが必要で、業務の一環としてだけでなく、社会をより良くする熱意を持って取り組まないとダメなんですね。

環境教育で重要だと思っていることは、その活動を文化にする、風土にすることです。そこまで定着させないと、市民生活の中に根付くことは難しいからです。生活の中に染み込んでいくような活動を繰り返し行うことで、子供たちが普段の生活で数々の体験をする。それを、私たち大人が支援・共感する。そうすることで子供の気づきを促し、豊かな人間へと育んでいく。こうしたプロセスの中に、環境という意味付けをしていけば良いのではないでしょうか。この活動が3世代まで繋がったら、本当にすごいことだと思いますね。

Profile | 小川 雅由(元 こども環境活動支援協会(LEAF)専務理事)
1972年、西宮市役所入所。2003年に同市環境都市推進グループ課長に就任し、2006年、同市退職。1992年に環境省こどもエコクラブ事業(1995年スタート)の基本モデルとなる「地球ウォッチングクラブ(EWC)」事業を始める。1998年、「こども環境活動支援協会」を発足させ、2003年には全国初の環境学習都市宣言に大きく貢献。現在、持続可能な地域づくりに取り組む。